Off Topicの解散に際して、テック/ビジネス/カルチャーの横断や「コメント」について考える
#82 Traces of Choice (20260505〜20260509)
Traces of Choice は、JTCのIT部門で働く音楽愛好家が、ジャンルを横断して、日々気になった / 面白かった情報をキュレーションしてお届けするニュースレターです。
1.Tech
Most Companies Aren’t Anywhere Near Ready for AI(ほとんどの企業はAI導入の準備が全くできていない)
あまりにもその通りすぎる内容だった。DXでも通った道。
大体の場合において、自分たちが何をしていて、何をすべきなのか、という基本的な整理の不在が根本的な問題なのである
“AIが自分の望むことをできないという人々の不満のほとんどは、実際には彼らが自分の望むことをうまく説明できていないことに起因している”
“「そんなにひどいなら、どうしてまだ存在しているのか?」答えは簡単です。彼らの競合他社のほとんども同じくらいひどいからです”
Xへの抵抗戦略 / ニュースレター始めました|樫田光 | Hikaru Kashida
よくわかる話。アルゴリズムではなく、意図して届けて届くことの意味。
へぇ
“2026年時点で、Xでの投稿が自身のフォロワーに届く率は、フォロワーの3%以下(Facebookでは2~6%程度)だという調査結果があります”
ぱっと見つけたやつ。確かにそうっぽい。:Social Media Benchmark Report 2026 (All Platforms)
自分の観測範囲だと、この辺からSubstack人気が出ているように見えているという理解
2.Business Skill
Why Your Best Ideas Aren’t Original(なぜあなたの最高のアイデアは独創的ではないのか)
重要なのはアイデアや答えではなく、枠組みや問いである
“ダーウィンの画期的な発見で最も驚くべき点は、マルサスの著作を読み、その思想を種の起源に適用したイギリス人が彼だけではなかったということだ。同僚の博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスも、種が生存競争を繰り広げ、特定の遺伝子が生き残るという同様の理論を提唱しており、ウォレス自身も進化論に関するひらめきのきっかけは、他ならぬあの陰鬱なマルサスだったと述べている”
“世界は、それぞれ全く異なる環境で働く人々によって、しばしばほぼ同時期に独立して発見された事柄の上に成り立っている。好むと好まざるとにかかわらず、これが現実だ。では、この事実は発明、創造性、そして独創性について何を物語っているのだろうか?天才やブレークスルーに関する一般的な概念は間違っている。私たちは、素晴らしい新アイデアは突拍子もない創造性の飛躍から生まれると信じたがる。天才とは、他の誰も気づかないものを見抜く一人の人間だと。しかし、イノベーションの真の歴史は正反対を示唆している。素晴らしいアイデアは、問題が適切な形で提示されたときに、少しずつ明らかになっていくのだ。”
“私たちが天才として記憶する人物は、たいていの場合、的確な問いが提起された時にすぐそばにいた人物です。一方、私たちが忘れてしまうのは、その問いを提起した人物、例えばマルサスのような人物です。マルサスは問題を解決するわけではありませんが、他の誰かが解決できるほど明確に問題を提起します。マルサスは多くの点で間違っていました。しかし、彼の間違いは非常に的確で、二人の博物学者がそれぞれ彼の考えを取り上げ、それを別の角度から捉え直すことで、彼自身には見えなかった何かを発見することができたのです”
“進歩の最大のボトルネックは、問題の捉え方にある。問題が十分に明確かつ正確に定式化されれば、答えは自然と見つかるものだ”
3.Music
「叩いて音が出ればなんでも面白い」 THE SPELLBOUND、Dos Monos……大井一彌が追求する“電子音楽×生演奏”の可能性
自分が最も好きなドラマーのインタビュー
“最近は「だったら全部オケを流せばいいじゃないか」と思う人も多いと思うんです。でも、なぜ生の演奏家がそこにいるかっていうと、乱数を求めてるからだと思うんですよね。そこで生まれる“揺れ”に人は感動したりもする。僕が演奏家という立場で、ライブとか音楽制作においてメリットを示すとしたら、やっぱりそこにあるのは乱数の魅力で、ドラムの生の演奏には必ず揺れが生まれるから、それを電子音と紐付けていくと、微妙なあわいのものが出来上がるんですよね。いろんな工夫をすることで、ある意味で完全な、でもどこか不安定な、魅力的なものになるんです。”
4.Book
『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』(川北 省吾 )|講談社
5.Video・Podcast
最終回 #317|オフトピック - YouTube
さすがにびっくりした。詳細はEditor’s Noteにて。
目に留まった関連のテキストたち
6.Other
Readwise Reader とは何か : 情報収集を一元化しよう|四季|shiki
GWの一番の成果かも。インプットのやり方が変わった
もともとはInstapaperに気になるものを放り込んでおいて、時間がある時にまとめて読むというシンプルなやり方をしていた
だが、もう少し効率化したいなと思って見つけたのが「Readwise」。有料だが、普通に気に入っている。
Instapaperに不満があったわけではないが、Xのポストの読み込みがうまくいかなかったりするし、もう少しAI上手く使えないかなとおもったところで、そこに合致したのが「Readwise / Readwise Reader」だった
Instapaperと連携できるので設定のみで移行すら不要(Instapaperに入れればそのままReadwise Readerに連携されるので、これまでの動線を変えなくてもいける)
記事を読み込むと自動でAIを走らせて、記事の要約や自動タグ設定ができるのがお気に入り。これがやりたかった(自動タグ設定にはOpenAIのAPI設定が必要そうでちょっとお金がかかるが、いうて大したことない)
今までKindleにつけたハイライトとかも結構放置だったのだが、ここに放り込むことで、定期的に復習する機能の対象にもできる。これもやりたかったやつ。
少し日本語の情報が少ないところはあるが、まだ1週間未満ではあるものの、今のところ不満は全くなく、これからも普通に使い続けたい
倫理的野心とオルタナティブ戦略
めちゃ良い内容だった、抽象で終わらず具体の話をしているのが特にいいし、そう思う だからこそ「会社員」の時代だなと思っているし、渡邉康太郎さんがいうところの「表現」の重要性を感じている
「会社員」の話 その1
「会社員」の話 その2
「表現」の話
Studio エッセンス_Vol.1 後編|Studioエッセンス
違和感を覚える美の基準の中で「過度に整った顔立ち」に一番票が集まったというのは、自分の目線で見れば、AIの文脈とも連なりを感じる話である 「美」とは何なのかって感じだな
「マスピ顔」への嫌悪感みたいなのも全く同じ話に感じる
テキストのAI臭への嫌悪感みたいな話は最近よく見かけるようになったけど、そもそもあまりにも「平均化」された結果というものに、違和感を感じるのが人間なのかな
※余談だが、テキストのAI臭に関する記事で一番良さげだったのが、アクセンチュアとしての樋口さんがClaudeに書かせたものというのも、何とも言いがたいややこしさがある、、、笑
これらのZ世代アーティストたちは、「安定収入」を得る秘訣を見つけた――それは“郵便クラブ”だ | Business Insider Japan
アーティストがアナログレターで毎月購読者にアートを郵送するという話、流行の賞味期限もリアルに考えている点も含めて、非常に今っぽい
“そこそこの収益を得られるアナログレターは魅力的だが、取材に応じたアーティストたちは、この流行が一過性で、限られた時間で稼いでいるという感覚を持っている。
アボルファシ教授は、この流行はアナログ好きのZ世代の中では継続しても、市場全体に広がる可能性は低いとみている。
オーストラリア在住のあるアーティストは、すでにスネイルメール・クラブの終わりを見据え始めている。”
”「現実的に考えると、スネイルメール・クラブの寿命はあと1年くらいではないか」”
最近自分が出したもの
「1人、だけどみんなといる」 ”あわい”の場が求められている? 〜「一人は好き、孤独は嫌い」な私たちの最適解〜 - 余白のエクリチュール | Podcast on Spotify
個人行動と集団行動に関するいろんな事例をもとに、結構面白い話していると思います
参考記事はこちら:https://www.notion.so/2026-05-08_-52-3541d2f9389a801aa414cc2e5e1bb8fe?source=copy_link
溜め込んでいたおすすめ楽曲紹介をGWにまとめて出しました
Editor's Note
さすがにびっくりした、Off Topicの解散。
タイトル見た時は一瞬何の冗談かと思ったが、聴き始めてすぐに本気だなと理解した。
まぁ何となく嫌な予感はしていたんですよ、草野さんがお休みしたあたりから。
今回のEditor’s Noteではこの話に関連して、3つ書き残しておきたい。
1:Off Topicへの個人的な思い出
2:テック/ビジネス/カルチャーを横断して考えること
3:「コメント来ない」問題について
まずは、個人的なOff Topicとの思い出の話。
そもそもずっと良いリスナーだったわけではない。ただ、なにきっかけだったかは記憶にないのだが、2024/04/18に以下を聴いた時に、当時の自分の興味ど真ん中の話をしていて、抜群に面白かったのがきっかけで、メンバーシップにも入ったし、以降は毎週聴いていたと思う。
この回は、検索とは?データとは?コンテンツとは?メディアのあり方とは?といった話がひとつなぎで問いかけられている点がとても興味深かった。
メンバーシップのページは消えてしまったが、宮武さんのDaily Memoはいつも思考が深まるきっかけになったし、2回参加させてもらったmeetupも、お二人とお話しできる機会はほぼなかったが、とても楽しかった。
【ライブの記憶】Off Topic meetup 2024/11/01|sho5_midday
memofleetさんの毎回の完璧なインフォグラフィックも含めて、素晴らしいコンテンツだった。
より個人的な話としては、「ツドイの編集学校」について知るきっかけになったのは、お二人のポストで、そこから実際に参加して、自分の世界が大きく広がった感覚があるので、その意味でも感謝が大きい。
【ライブの記憶】 ツドイの編集学校(2025 春/ 東京2期) 2025/1~5|sho5_midday
ここでシームレスに次の話題に行きたいのだが、改めて考えても、とてもクオリティの高いコンテンツだったなと思うものの、そもそも日本におけるテック/ビジネス/カルチャーを横断して考えることのニーズの小ささみたいなことを感じている。
どこかで宮武さんが、アメリカではこういった横断はよくあるが日本では多くないといったニュアンスのコメントをされていた記憶があるのだが、本当にそう思う。
なんとなくカルチャー側から横断していくケースは一定あるものの、特にテック/ビジネス側から横断していくケースはかなり少ないように思うのだが、どうだろう。
少なくともJTCにいる身として、身の回りでこんなことを考えている人は皆無と言っても過言ではないだろう。ITの仕事をしていても、いわゆるテック、もっと言えばAIについての興味も大して多くないのが実情。ビジネスに関してだってそうだし、カルチャーなんてもってのほか。スタートアップだとまた違うとは思うが。
ある種の”人文知ブーム”みたいなものを、テック/ビジネス側から横断と位置付けることはできるとは思うが、なんか違うんだよなぁというか、どうしても浅い感じがしてしまうものが多いし、むしろそういう浅さ的なものの方が求められていて、真の意味でのニーズはあまり大きくないように感じている。
一方で、AIが本気でやばいことになってきていて、テック/ビジネス/カルチャーの領域(ここに政治を入れても良いかも)が融解してきているというか、それぞれで考えると見落とす視点が日々大きくなってきているのではないか。第一線の人たちはそれを肌で感じていて、アウトプットに影響しているようにも思う。
だからこそOff Topicのような存在は貴重だったと思う。初学者に大してハードルを限りなく低くしておくというタイプではないので、入りやすいものではなかったとは思うが、引用元もしっかり明示されていて、根拠をもって深掘りしていく姿勢が、素晴らしかった。音楽の世界で、マスの知名度に関わらず、同業者から支持と尊敬を受けるアーティストのことを「ミュージシャンズ・ミュージシャン」と呼んだりするが、まさしくそういう存在だったのではないか。(あえて書けば、同時に「ミュージシャンズ・ミュージシャン」がよく抱える課題と同じものをOff Topicも抱えていたように思う。)
余談的に、もう一つ思っていることを書いておくと、Off Topicはアメリカのことを理解する一つの入口としてとても良かったと思うのだが、トランプ2期以降、AIの指数関数的な成長速度とも相まって、世界の多極化が進むにつれて、本当は海外の文化と日本の文化の両面を理解して、日本ローカライズしていく必要性もどんどん増していると思う。ただ、難易度も相当高いだろうから、そこまでやれているケースは、皆無に近いように感じている。観測範囲だと中路さんはそういうことを考えてそうだなとは思うが。
閑話休題。Off Topicはそういう骨太なコンテンツだったこともあり、「コメント来ない」問題というのは常にあったんだろうと想像する(し、本人たちもおっしゃっていた)。
この問題は、PODCAST EXPO 2026でOffTopicとLobsterr FMでのトークセッションでも話題になっていた。確かにOff Topicはたまにコメントしていたものの、自分自身、LobsterrはニュースレターもPodcastも、なんならメンバーシップにも入っているが、今までほとんどコメントしたことがない。佐々木さんご本人にもそれを見切り発車でお伝えしてしまったが、やっぱりこの問題は難しいなと思う。自分で話して分かったが、やっぱりハードルの高さというか、コンテンツが骨太であればあるほど、何をどのようにコメントすれば良いか迷ってしまい、結局コメントしない、みたいなことが起きているように思う。
別のセッションでも、アナウンサーの吉田尚記さんが、Podcastは再生回数に対してのリアクションが全く見えないと言っていたが本当にそうなのだろう。推察だが、お二人のニュアンスを感じ取るに、Off Topicの解散に「コメント来ない」問題が全く影響していない、とは、言えないだろう。リアクションが見えないと、物事は継続できない。自戒も込めて、普遍的な事実だろう。
自分自身「コメント」には興味を持っていて、「コメント」論を自分のPodcastで考えてみたりするが、発信も受信もAIが増えていくだろう世界において、人間による「コメント」については、もっと考えるべきだろう。
コメントがよく来ているPodcastは何だろう?と考えてみると、『奇奇怪怪』と『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』 が思い浮かぶ。
前者のSpotifyコメント欄の盛り上がりは凄いなといつも思うが、これはコミュニティ的強さだろうと思うが、後者が特に興味深い。
おそらく、色んな動線からコメントを受け取れるようにしていることや、毎回全てのコメントを番組で紹介してコメントを返すというやり方が非常にユニークかつ効果が出ている点なのだろうと思っている。(この辺の話は、より直接的に朝日新聞の神田さんが突っ込んで話している箇所があって、とても興味深かった。)
もう少しこの話を深掘りして終わりにしたい。他に「コメント」について、自分が今思っていることは二つ。
一つ目は、ニコ動/ニコ生的なコメントのあり方が結構良いのかなということ。
ニコニコ文化にもそこまでどっぷりというわけではないのだが、動画があがれば「うぽつ」、生放送が始まれば「わこつ」から始まる。意味はほとんどないが、これがコメントのハードルを下げるという心理的な効果はあるだろう。
そして何より「流れるコメント」というのは大きいのではないか。
ドワンゴが特許を取っているということは一応知っているので、そのまま流用はできない前提だが、これはやっぱり発明に思う。
コメントがしづらいという気持ちは、どうしても記録としてオープンに残ってしまうというのがあるのではないか。(この辺は、前回のAVYSSと起点にして、アーカイブ抵抗派の話に直結する)
その中で、流れるコメントは、文字通りストックというよりもフローのように見えるということで、コメントへの心理的ハードルは下がるような気がする。
その意味では、インスタのストーリー的な、DMっぽいクローズドなコメントのほうが今の時代に合っているのかもとも思う。
もう一つは、「いいね以上、コメント未満」のリアクションの発明が必要なのかなということ。
無機質な視聴のデータだけでは感じ取れない何かがあり、それをコメントに求めているというのが今の構図のように感じている。
だが、そもそもながら聞きが重要な要素になっているPodcastでそれを求めるのは、普通に動線が悪い。そこをAIでなんとかならないかとも思うが、そもそもコメント以外の何らかのリアクションのあり方はないのだろうか。
多分リアルイベントの場合は、「その場にいる」ということこそが、「いいね以上、コメント未満」のリアクションになっているはず。そういったものを、Podcastの自然な動線の中でも生み出せると良いのかもしれない。
(「コメント」については、奇奇怪怪でやっている団地にて、宮武さん×中路さん×TaiTanのエピソードがちょうどあがっていて、そこでも触れてそうである。ゆっくり視聴したいと思う。)
改めて、Off Topicの解散は残念だが、今後もお二人は活動されていくようではあるから、今後の活躍も楽しみにしたいと思う。一旦、本当にお疲れ様でした。











